東京のマンションを売却して、鎌倉へ 定年後の住み替え相談
| 所在エリア | 東京都内 |
|---|---|
| 価格帯 | 約7000万円 |
| 媒介形態 | 専属専任 |
| 売却までの期間 | 約4か月 |
リフォームせずに売却した東京のマンション
「定年を機に、東京のマンションを売って鎌倉へ移住したい。」
そんなご相談をいただいたのが、A様とのお付き合いの始まりでした。
A様は、以前から当社のホームページやYouTubeチャンネル「鎌倉日和」をご覧くださっていたそうです。
鎌倉で不動産を探す中で当社を知り、動画などを見ているうちに親近感を持ってくださったとのこと。
そこで、鎌倉での住まい探しだけではなく、
「今住んでいる東京のマンションの売却もお願いできますか?」
とご相談いただきました。
もちろん、お引き受けしました。
私たちは鎌倉の不動産会社ですが、東京から鎌倉へ移住されるお客様にとって、
「東京の家を売ること」と「鎌倉の家を買うこと」は別々の話ではありません。
一つの「住み替え」です。
今回は、その中でも東京のマンションをどのように売却したのかをご紹介したいと思います。
A様のご自宅は、新宿区にあるマンションでした。
購入されたのは約25年前。
新宿区という便利な場所にありながら、近くには神田川が流れ、春には桜並木を楽しむことができます。
部屋からも緑が見え、都心でありながら自然を身近に感じられる、とても良い環境でした。
一方で、築25年です。
当然、新築マンションのような室内ではありません。
中古マンションを売却するとき、
「リフォームして、きれいにしてから売った方が高く売れるのではないか?」
と考える方は多いと思います。
しかし私は、このマンションについては、
「リフォームせず、このまま売りましょう。」
とご提案しました。
なぜ、リフォームしなかったのか
私はこれまで都内のマンション売却も何件かお手伝いしてきましたが、その中で感じていることがあります。
それは、
「中古マンションは、本当に売主がリフォームしてから売る必要があるのだろうか?」
ということです。
もちろん、リフォームした方が良い物件もあります。
汚れや傷みがひどく、そのままでは買主様が生活をイメージしにくい場合もあるでしょう。
ですから、「中古マンションはリフォームしない方がいい」と一律に考えているわけではありません。
しかし、リフォームには当然お金がかかります。
数百万円かけてきれいにしたとしても、その費用以上に売却価格が上がる保証はありません。
しかも、もう一つ問題があります。
「売主様が選んだ内装を、買主様も気に入るとは限らない」
ということです。
これは少し私自身の好みも入りますが、私は画一的にきれいにされた部屋よりも、自分なりの個性を出せる部屋の方が好きです。
壁をどうするか。
床をどうするか。
キッチンをどうするか。
せっかく中古マンションを購入するなら、自分の好きなように手を入れたい。
そう考える方も、決して少なくないと思っています。
それなら、売主様が費用をかけて画一的なリフォームをするより、
「現状のまま購入して、ご自分の好きなようにリフォームしてください。」
という売り方があってもいいのではないか。
そう考えました。
その方が、売主様は余計な費用を負担せずに済みます。
そして買主様には、自分好みの住まいをつくる余地が残ります。
今回のマンションについては、その方法が合っていると判断しました。
ただし、
リフォームしない=何もしない
ではありません。
ここは、とても大切です。
A様には、室内を徹底的にきれいにしていただきました。
物を整理し、掃除をして、内見された方が気持ちよく部屋を見られる状態にする。
お金をかけて新しくすることと、今あるものをきれいに見せることは別です。
そして、私たち不動産会社がやるべきことは、
「古い室内を隠すこと」ではなく、「このマンションがもともと持っている価値を伝えること」
だと考えました。
神田川の桜並木を、どうやって伝えるか
このマンションの魅力は、部屋の内装だけではありませんでした。
近くを流れる神田川。
その川沿いに続く桜並木。
春になると、とてもきれいです。
そして部屋から見える緑。
こうしたものは、間取り図を見ているだけでは分かりません。
そこで、写真だけではなく動画も使って、このマンションで暮らす魅力を伝えることにしました。
神田川沿いを歩きながら桜並木を撮影する。
部屋から見える緑を動画で見せる。
周辺の雰囲気も伝える。
私たちが売りたかったのは、
「築25年の中古マンション」
だけではありません。
「ここで、どんな暮らしができるのか」
でした。
そして、もう一つ大切にしたことがあります。
他の不動産会社にも積極的に情報を公開することです。
物件情報だけではありません。
せっかく撮影した写真や動画も、できるだけ共有しました。
自社だけで買主様を見つけることにこだわるより、多くの不動産会社にこのマンションの魅力を知ってもらった方が、売主様にとっては良い結果につながる可能性があります。
私たちにとって大切なのは、
「誰が買主様を見つけたか」ではなく、「どうすれば良い買主様にこの物件が届くか」
だからです。
「業者に買い取ってもらう」という方法もありますが……
中古マンションの売却では、不動産会社などの事業者が物件を買い取り、フルリフォームして再販売する方法もあります。
売主様にとっては、早く売却できるなどのメリットがあります。
一方で、当然ながら事業者は、購入後にリフォーム費用をかけ、さらに再販売する事業として利益を確保する必要があります。
そのため、一般の買主様へ売却する場合と比べて、買取価格が低くなることがあります。
もちろん、何を優先するかは売主様によって違います。
「多少価格が下がっても、とにかく早く確実に売りたい」という方には、買取が適している場合もあります。
しかし今回のA様の場合は、そこを急ぐ必要はありませんでした。
それなら、
売主様がリフォーム費用を負担するのでもなく、安易に買取を選ぶのでもなく、現状のまま一般の購入希望者へ魅力を伝えてみよう。
それが私たちの出した答えでした。
そもそも、A様の本当の目的は、新宿区のマンションを売ることではありません。
定年を機に、鎌倉で新しい暮らしを始めることでした。
そのため私たちは、新宿のマンションの売却を進めながら、並行して鎌倉での住まい探しもお手伝いしました。
東京の家をいつ売るのか。
鎌倉ではどこに住むのか。
購入するのか、それともまずは賃貸にするのか。
こうしたことは、すべてつながっています。
お客様にとって「東京の家を売ること」と「鎌倉で家を探すこと」は、別々の不動産取引ではありません。
一つの住み替えです。
だからこそ、一つの不動産会社が全体を見ながらお手伝いすることにも意味があるのだと思います。
なお今回は、売却と住み替えの両方をご依頼いただいたこともあり、仲介手数料についても一部調整させていただきました。
A様とは、鎌倉の物件を一緒に見て回りました。
何度もお会いしていろいろなお話をするうちに、だんだん不動産以外の話もするようになりました。
そして、お互いに昔ながらの渋い居酒屋が好きだということが分かりました。
それからは、物件を見た帰りに、
「今日はどこで一杯やりますか。」
ということもしばしば。
ずいぶん一緒に飲みました。
私自身も、いつの間にかA様との物件探しが楽しみになっていました。
住まい探しというのは、条件に合う物件を紹介すれば終わり、という仕事ではありません。
何軒も一緒に物件を見て、いろいろなお話をしていると、
「この方は、どんな暮らしをしたいのだろう。」
「何を大切にしているのだろう。」
ということが少しずつ分かってきます。
特にA様の場合は、定年後の新しい生活をどこで、どのように過ごすのかという住まい探しでした。
私も単に「鎌倉の物件を紹介する」というより、これからの暮らしを一緒に考えているような気持ちになっていました。
移住後、半年で終わった鎌倉暮らし
新宿のマンションを売却した後、A様ご夫妻はまずは鎌倉の賃貸マンションへ移られました。
鎌倉に終の棲家を探すために、まずは賃貸マンションに住まわれることになりました。
ところが、ここから思いがけない展開になります。
半年ほど経ったころ、A様から、
「東京に戻ることになりました。」
と連絡がありました。
お話を伺うと、奥様にとって鎌倉での生活は、想像していたものとは少し違ったようです。
鎌倉の静かな環境は魅力でもありますが、人によってはその静けさを物足りなく感じることもあります。
また、長年都心で生活してきた方にとっては、交通や買い物などの利便性にも違いがあります。
結局、A様ご夫妻は半年ほどで鎌倉を離れ、再び都内の賃貸マンションへ移ることになりました。
このときの都内の賃貸物件は、当社では取り扱うことができない物件だったため、残念ながら当社で仲介することはできませんでした。
鎌倉移住は、誰にでも合うわけではありません
私は鎌倉で不動産業をしています。
ですから、鎌倉を好きになっていただき、ここで暮らしてくださる方が増えることはもちろん嬉しいことです。
しかし、この出来事を通して改めて感じたことがあります。
鎌倉移住は、すべての方に合うわけではありません。
観光で訪れて「いい街だな」と思うことと、毎日の生活をここで送ることは違います。
海や山が近く、静かで自然の多い環境を何よりの魅力と感じる方もいれば、都心の便利さや賑わいが自分には合っていると感じる方もいます。
そして、ご夫婦であれば、お二人の感じ方が同じとも限りません。
だから私は、鎌倉への移住を考えている方に、何が何でも「鎌倉はいいですよ。ぜひ住みましょう」と勧めるのは違うと思っています。
その方、ご家族にとって、本当にどんな暮らしが合っているのか。
そこから一緒に考えることの方が大切です。
A様ご夫妻が最初に鎌倉で賃貸を選ばれたことで、「実際に住んでみる」という経験ができたことにも意味があったのではないかと思っています。
その後しばらくして、A様から再びご連絡をいただきました。
今度は、
「都内でマンションを購入したい。」
というご相談でした。
そして、そのマンションの購入についても、当社に仲介を任せてくださいました。
これは私にとって、とても嬉しいことでした。
最初にお会いしたときは、
「新宿のマンションを売って、鎌倉へ移住したい。」
というご相談でした。
そこから、
新宿のマンションを売却し、
鎌倉で住まいを探し、
鎌倉で暮らし、
もう一度東京へ戻り、
そしてまた都内でで新しい住まいを購入する。
ずいぶん長い住まい探しになりました。
でも振り返ってみると、私はこういうお付き合いこそ、不動産会社の仕事の面白さなのではないかと思います。
不動産会社の仕事は「鎌倉に住んでもらうこと」ではありません
A様の事例では、当初計画していた「定年後の鎌倉移住」は、結果として半年で終わりました。
でも、私はそれを失敗だったとは思っていません。
実際に住んでみたからこそ、
「自分たちには、やはり東京での暮らしの方が合っている。」
ということが分かったからです。
大切なのは、「鎌倉に住む」という当初の計画を守ることではありません。
ご夫婦がこれから気持ちよく暮らせる場所を見つけることです。
その答えが鎌倉なら、もちろん嬉しい。
でも、東京に戻ることがその方にとって幸せなのであれば、それもまた正しい選択だと思います。
私たちは「鎌倉日和」というホームページを運営している鎌倉の不動産会社ですが、鎌倉に住むことをお客様に押しつける会社にはなりたくありません。
売る。
買う。
貸す。
借りる。
その時々で、お客様にとって何が一番良いのかを一緒に考える。
それが私たちの仕事だと思っています。
取引が終わっても、お付き合いは継続させていただきたいと思っています
これからも、ときどき一緒に飲みに行きたいと思っています。
不動産の話をすることもあれば、まったく関係のない話をすることもありました。
最初は「新宿のマンションを売りたい」という一本のご相談でした。
それが鎌倉での家探しにつながり、東京へ戻った後のマンション購入につながり、そして今では一緒にお酒を飲む関係になりました。
私は、不動産取引は契約や決済が終わったら、それですべて終わりというものではないと思っています。
一度の取引ではなく、その方の暮らしが変わるたびに、また相談していただける。
そんな不動産会社でありたいと思っています。