親の物忘れが増えてきました。介護に備えて実家を売却した方がいいでしょうか?
まずは親御さんの認知機能の状態を確認してください。判断能力が低下すると、子どもでも親名義の家を勝手に売ったり貸したりすることはできません。まだご本人の意思が確認できるうちに、介護費用や今後の暮らしを考え、実家を売る・貸す・持ち続けるのかを家族で話し合っておくことが大切です。
「最近、親の物忘れが多くなってきた」
「今は一人で暮らしているけれど、この先、介護が必要になるかもしれない」
「施設へ入ることになればお金もかかる。元気なうちに家を売って、現金にしておいた方がいいのだろうか」
60代くらいの方から、このようなご相談をいただくことが多くなってきました。
この場合、「売却するか、貸すか」を考える前に、確認していただきたいことがあります。
親御さんの現在の認知機能の状態と、不動産の売却についてご自身で判断できる状態にあるかどうかです。
「まだ認知症と診断されていないから大丈夫」とは限りません
実際のご相談では、
「年相応の物忘れだと思います」
「まだ認知症とは診断されていません」
とご家族から伺っていても、実際に親御さんとお会いすると、想像していた以上に認知機能が低下していることがあります。
逆に、認知症の診断を受けていたとしても、そのことだけをもって直ちに不動産を売却できないと決まるわけではありません。
大切なのは、病名の有無だけではなく、ご本人が「自分の不動産を売る」ということを理解し、その内容や結果を踏まえて意思表示できる状態なのかという点です。
不動産売却では、所有者本人の意思確認が非常に重要になります。
物忘れが気になり始めたら、まず現在の状態を確認する
ご家族が「最近ちょっとおかしいな」と感じ始めた段階であれば、売却を急ぐ前に、まず親御さんの状態をきちんと確認することをお勧めします。
必要に応じて医療機関に相談し、認知機能の状態を確認することも大切です。
そして、不動産の売却を具体的に検討するのであれば、早い段階で司法書士などの専門家にも相談しておくと安心です。
当社では、このようなケースについて相談できる司法書士をご紹介することもできます。
親御さんの状態によっては、「今の状態で売却手続きを進めることができるのか」という判断が必要になることもあります。そのような場合には、不動産会社だけで判断せず、司法書士などの専門家と連携しながら進めることが大切だと考えています。
なぜ、早めに確認しておく必要があるのでしょうか。
登記上の所有者である親御さんの判断能力が低下してしまうと、たとえ子どもであっても、親御さん名義の家を勝手に売ったり、貸したりすることはできないからです。
「親が施設に入ることになったので、空いた実家を売って施設費用に充てよう」
「誰も住まないので、貸して家賃収入を介護費用にしよう」
ご家族がそう考えても、家の所有者はあくまで親御さんです。
親御さんご本人が契約の内容を理解し、意思表示することが難しい状態になっていれば、子どもだからという理由だけで、その不動産を自由に処分することはできません。
その場合には、成年後見制度などを利用して手続きを進めなければならないケースもあります。
「必要になったら、そのとき家を売ればいい」と考えていたのに、いざ売ろうとしたときには簡単に売却できない。
実際の現場では、こうした問題が起こります。
「まだ判断できる」のか「すでに難しい」のかで、その後の進め方が大きく変わります
親御さんが不動産売却について十分に理解し、ご自身の意思を示すことができるのであれば、そこで初めて、
「今後も自宅に住み続けるのか」
「施設への入所を考えるのか」
「家を売却して介護資金を確保するのか」
「賃貸にして家賃収入を得るのか」
といった選択肢を、ご本人とご家族で検討していくことになります。
一方、すでにご本人だけでは不動産売却について適切な判断をすることが難しい状態であれば、成年後見制度などの利用を含め、今後の財産管理について専門家と相談しながら考える必要が出てきます。
つまり、
「物忘れが増えてきたから、家を売ろう」
ではありません。
まず、
「現在、親はどのような状態なのか」
を確認する。
その結果によって、その後の道筋が変わってくるのです。
「もう少し様子を見よう」が問題になることもあります
ご家族にとって、親御さんの認知機能の低下を認めることは簡単なことではありません。
「最近忘れっぽいけれど、年齢のせいだろう」
「普通に会話はできているから大丈夫」
「まだ施設を考えるほどではない」
そう思うのも自然なことです。
しかし、認知機能の低下はいつも分かりやすく進むとは限りません。
会話をしていると一見しっかりしているように見えても、重要な判断になると十分に理解できていないこともあります。
そして、いざ施設への入所費用などでまとまった資金が必要になり、
「では実家を売却しよう」
となったときに、ご本人の意思確認が難しくなっていることがあります。
ですから、物忘れが気になり始めた段階は、
「すぐに家を売る時期」ではなく、「これからのことを具体的に考え始める時期」
と捉えていただくのがよいと思います。
判断能力が確認できたら、そこで初めて「家をどうするか」を考えます
親御さんがご自身で判断できる状態であれば、次に考えるのは将来の生活と資金です。
現在の預貯金はいくらあるのか。
年金収入はいくらあるのか。
自宅で生活を続ける場合には、どの程度の費用がかかるのか。
施設へ入居するとしたら、入居時と毎月の費用はいくら必要なのか。
そのうえで、不動産について、
売却する
賃貸する
当面所有しておく
という選択肢を比較します。
介護が心配だからといって、必ずしも自宅を売却する必要はありません。
反対に、自宅という大きな資産を持っていても預貯金が少ないのであれば、元気なうちに不動産を現金化して、今後の生活資金を確保しておくことが安心につながる場合もあります。
まだ売却を決めていない段階でご相談ください
このような問題では、
「売ることが決まってから不動産会社へ相談する」
のでは、遅い場合があります。
むしろ、
「最近、親の物忘れが気になってきた」
「将来、施設へ入ることになったら実家をどうしよう」
という段階で構いません。
まず親御さんの状態を確認し、必要であれば司法書士などの専門家とも連携する。
そのうえで、
「売ったらいくらになるのか」
「貸したらいくらくらいの家賃になるのか」
「そのまま持っておく場合にはどんな費用がかかるのか」
といった判断材料を揃えていきます。
大切なのは、急いで売却することではありません。
親御さんご本人がこれからどのように暮らしたいのか。
そのためにはどのくらいのお金が必要なのか。
そして、大切なご自宅をどうするのが一番よいのか。
まだ選択肢がある段階から、ご家族で考え始めることが大切だと思います。
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